たのしい知識 Le gai savoir

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ことば|記憶|アーカイブ

生殖と性愛の分離と国家への自発的隷属──『殺人出産』評──

今から100年前、殺人は悪だった。それ以外の考えは存在しなかった。私が幼稚園くらいのころもまだ、殺人は悪という考えが根強かった。殺意を冗談めかして言う人はいたが、本気だと捉えると殺人予告と見なされ通報されたりするような、デリケートなものだった…

炭酸水の星

ある眠れない大嵐の夜のこと。 その日は珍しく眠れなかった。目は冴えていたし、心なしか動悸もしていた。夜遅くまで作業していたからかもしれない。外の風は強く、悲鳴とも叫び声とも判別つかなかったような音だった。その日は嵐だった。その年一番の大嵐だ…

「メタ文学論」あるいは「文学の基礎づけ仮説」について(初期のメモ)

以下の資料は、「「メタ文学論」あるいは「文学の基礎づけ仮説」について」を書く際に、出発点として書いたものです。かなり変更を加えたのでこちらも載せておきます。

「メタ文学論」、あるいは「文学の基礎づけ仮説」について(3)

本エッセイは以下のエッセイの続きである。 hiropon110.hatenablog.com hiropon110.hatenablog.com 補論(3) 「メタ文学論」の弱点 1. 外延が明確に確定されておらず、確定のための明確な基準が、理論体系のうちに示されていない 2. 著者がなぜ当該事象より以…

「メタ文学論」、あるいは「文学の基礎づけ仮説」について(2)

本エッセイは、以下のエッセイの続きである。 なお、本エッセイでは、本エッセイにおいて主要な論述を行なったのち、「まとめ」の前にいくつかの「補論」を付す。 hiropon110.hatenablog.com 3. 「テクストの超越論的先行性」の論証 1. 仮想的反論の提示 2. …

「メタ文学論」、あるいは「文学の基礎づけ仮説」について(1)

はじめに 本エッセイでは、「歴史上の古典的なテクストの価値はいつの時代でも変わらず、それゆえ、特定の事象を理解する際に古典的なテクストを読解することには意味がある」という主張を擁護する仮説を提起したい。 そしてその仮説全体の妥当性は、「テク…

「遅効性(slow acting)」ドラッグとしての展示──大岩雄典「スローアクター」評

本記事は、2019年の2月9日から3月2日まで駒込倉庫にて開催された、大岩雄典「スローアクター」の展評である。大岩のプロフィールと本展の概要については、以下の特設サイトの紹介を参照。 大岩は2017年の第4回CAF賞海外渡航費授与賞授賞をはじめ、日本のコン…

「カントってどういう哲学者なの?」と聞かれたときのために【論考】

本記事は、18世紀のドイツで活動した哲学者であるカントが、一体どのような哲学を構想していたのかについて、その最も基本的な大枠を提示するものである。 哲学にあまり詳しくない人でも、カントの名前を聞いたことがある人は多いだろう。哲学史において、カ…

「隠し事を空輸することはできない、と思う」【日記】

空港に来ると毎回(ほんとに毎回)必ずキューブリックの「現金に体を張れ」を思い出す。滑走路の上に舞う札束のイメージ。フィルム・ノワール。隠し事を空輸することはできない、と思う。18.8.? まるで浦島太郎にでもなった気分です、と言ったとき、ふいに「桃…

『欲望会議』出版記念イベント メモ(1/31) 【イベントレポート】

本記事は、ゲンロンカフェで一月三一日に行われた『欲望会議』(KADOKAWA,2018)の出版記念イベントのメモである。なお、このメモは、その場で取った記録を下敷きとしているが、どの発言がどの登壇者と対応しているかを記録していないため、あくまで本メモは…

手をあげる-手があがる=?(『それは私がしたことなのか』第一章と第二章)【書評】

本記事は、古田徹他『それは私がしたことなのか 行為の哲学入門』(新曜社、2013年)の第一章と第二章のメモである。本書は三章構造になっている。著者がエピローグでも述べている通り、第一章と第二章はいわゆる「心の哲学」と関連しており、第三章は「責任」…

心ならざる魂、その統一的理解への予備的考察【論考】

アリストテレスの『霊魂論』について書きました。以下、題名と目次です。 心ならざる魂、その統一的理解への予備的考察 はじめに 第一章 心身問題を巡る状況 第一節 生命における物体的なものと非物体的な働き 第二節 デカルトにおける心身二元論と心的因果 …

コーヒー・チェーン店【エッセイ】

よく行くコーヒー・チェーン店には時々白痴のひとが訪れる。白痴と呼ぶべきか、何らかの精神遅延を伴う障害を持ったひとと呼ぶべきか、それはさしあたり問題ではない。彼のことを白痴と呼ぶのは単に便宜上の都合によるものであり、特に深い意味はない。 彼は…

ハンナ・アレントの「危機意識」について【論考】

はじめに ハンナ・アーレントは、20世紀に活動し、政治哲学の領域で多数の著作を残した哲学者である。アーレントの著作活動は『全体主義の起源』に始まり、『人間の条件』『革命について』『イェルサレムのアイヒマン』『暗い時代の人々』、そして遺稿となっ…